2016年05月

2016年05月19日

世界のスキマをアナタで埋めたい

殺したい 殺されたい
世界のスキマを アナタと埋めたい

リフレイン
何度でも囁くよ
リフレイン
何度でも蘇る

物言わぬ骸を抱きしめて
愛に耽るholly night
アナタの冷たさ抱きしめて
溢れる愛しさで口付ける

喰らいたい 喰らわれたい
世界のスキマを アナタで埋めたい


ru_ci_fel at 20:45|PermalinkComments(0)†詩歌遊戯† 

2016年05月06日

†創話遊戯† カニバルとラブの狭間で

口に含んだ瞬間、感じた強い吐き気を。
僕は懸命に押し殺した。
ガリ、ゴクン、ガリ、ゴクン…
できるだけ無機質に、機械的に、咀嚼していく。
定期的に水で流し込みながら。
そのせいで僕の席だけ、卓上水の減りは早かった。

「近藤君?顔色が悪いけど、大丈夫?」
話しかけられた方を向くと、心配そうに首を傾げる姿が目に入った。
その首筋を見た瞬間、ゴクリ、と喉がなりかけたのを気付かれないように、さり気無く誤魔化した。
「大丈夫、ちょっと考え事をしててね」
「考え事?」
「ニンゲンの定義は何か、ってね」
「? 人間は人間でしょ?」
「そうなんだけどね」
肩をすくめると、おかしな事を言うのね、と、彼女はコロコロと笑った。

苦笑して、また少し口に運ぶと、今度は脇腹から周辺に向かって、ゾワゾワと悪寒が走った。
思わず顔を顰めると、また、近藤君?と心配そうに言われた。
それを聞いて、つい、コンドーム君なんてあだ名を付けられなくて本当に良かったなあ…なんて、バカな事を思ってしまった。
そんなあだ名を付けるような人は、普通、いないだろうが、僕の周りにいる人達ときたら、そういうバカなあだ名を喜んでつけそうな奴らばかりだったから、ないとは言い切れない。
「近藤君ってば」
…いけない。すぐに思考が傍にずれてしまうのは、僕の悪い癖だ。
ええと、だけど僕は今、誰と何を話してたんだっけ?
記憶を急いで辿る。目の前には見知った顔。
ああ、そうだ。この子は紗希、僕の幼馴染だ。
幼馴染のくせに、未だに僕の事を苗字で呼ぶ、変わった子。でも、悪い子じゃない。
…そう、悪い子じゃないんだ。
「ごめんごめん、紗希」
「もう。本当に大丈夫なの?」
「うん、ごめんね」
「大丈夫なら良いんだけど。家庭教師してくれる約束、今日だったでしょ?来れそうなの?」
…そういえば、彼女に家庭教師紛いの事をする約束をしてたのは今日だった。
一瞬悩んで、答えを出す。
「悪いんだけど、延期させて貰えるかな?」
「やっぱり体調悪いの?」
「いや。今日は狼にならない自信がない」
「バカ、何言ってんの」
「あはは」
軽く笑って、流す。
紗希がヒラヒラと手を振って去っていくのを、僕も努めて笑顔で見送った。
彼女の、スカートから溢れた足や、そのうなじなどには、視線を向けないようにしながら。
ホントだよ、と、小さく呟いたそれは、小さく空に溶けた。

ニンゲン。
その定義は、何だろう?
言葉を話して、二本足で歩いて、手を使えて…
じゃあ、言葉をしゃべれなかったら?理解できなかったら?
手が使えなかったら?足で立てなかったら?
だけど、そうだ。
人間を食べない、って事だ。
人間を食べないなら、人間だ。
僕は。
人間で、いたい。

紗希を初めて綺麗だと思ったのは、いつだっただろう?
幼馴染という生き物から、紗希という生き物として、意識し始めたのは?
欲しい、と、思い始めたのは?
だけど、健康的な手足に、時折見せる表情に、思ってたより女っぽかった所に、『そそられる』とはこういう事だろうか、と、思い始めてから、違和感を感じるまでには、そう掛からなかった。
そして。
違和感を感じる程に、食欲が減っていったのも。
気付くまでには、そう、掛からなかった。

ご飯が美味しくない。何を食べてもそうだ。
食欲がないのかと思ったが、そうじゃない。
飢餓感は、むしろどんどん増しているのだ。
嗚呼。
僕は、人間を辞める、何歩前?

紗希。
思い出した瞬間、ゾクリと走った。
嫌悪感じゃない。むしろ快感に近いそれ。
これがただの快感なら良かったのに。
発情して、欲情して、思い出すだけで興奮してしまうような、青少年宜しく、そんな劣情なら良かったのに。
だけど、違う。
違うと解ってしまった。
だから極力、会う日を減らして、距離を置いて。
いつかこれが治れば良いと、淡い期待を抱いて。
なんとか宥めようとしているのに。

また一口、食べる。
食べろ、食べろ、食べろ。
収れ、収れ、収れ。
腹が空いてるなら、幾らでも食ってやるから。
だからそれだけは…
ヤメテク、レ……

誰に相談できるだろう?こんな事を。
きっと誰にも信じてもらえないか、病院行きだ。
いや、もういっそ病院に入ってしまえば、楽になれるのかもしれない。
でもそうすると、紗希には二度と会えないだろう。
それは、いやだ。
ねえ、紗希。
僕が今、こんな事を考えてるって知ったら、君はどう思うんだろね?
どんな目で…僕を見るんだろね?
ねえ、紗希……

重い足取りで。
学食を後に、した。




数日間、学校をサボって家で過ごしていた。
食べても食べても、太るどころか、むしろ痩せて行くのは酷く皮肉だった。
もう僕の身体は、マトモな食事は餌として認識できていないんだろうか?
身体が重い。 思考も泥のようで上手く纏まらない。
考えたい事、考えたくない事、湧き水みたいに、とめどなく、ああ、けれど。

無限ループは、チャイムの音に、掻き消された。
ノロノロと出てみると、案の定というべきなのだろうか、紗希だった。
「急にごめんね、心配で来ちゃった」
ありがとう、でもホントに体調悪くて…と、やんわり断るが、紗希は、だから来たんだよ、と、帰る気配は無かった。
諦めて、ドアを開ける。
「少し…痩せたね。ちゃんと食べてる?」
食べてるよ、と答える。
が、余り信じた様子は無かった。

「ねえ…風邪とかじゃないんでしょ?何か病気なの?ちゃんと病院行ってる?」
うん、大丈夫だよ。
「…何か、悩みとかあるんじゃないの?」
大丈夫だよ。
「嘘。近藤君、そうやって微笑む時はいつも嘘付いてる時だもん。ねえ、一体どうしたの?」
…ホントに大丈夫だよ。
「…私じゃ、頼りにならない…?」
…そんな事ないよ。
「だったら教えてよ!」
…頼むから、そんなに近付かないでくれ。
「近付かれたら困る事でもあるの?
あるよ、だから…

ドサリ、と、ソファーに押し倒される。
「ちょっと前から、ちょっとづつ、私の事、避け初めてたでしょ?何で?」
「気のせいだよ」
「気のせいじゃないでしょ!?」
「ちょっと忙しかっただけだってば」
「ねえ…何で、ホントの事言ってくれないの?何で私には…」
紗希が泣き始める。
「ごめんね…ごめんね、紗希…」
「謝るなら…教えてよ…」
それはそうかもしれない。でも、無理だ。
「ごめんね、それは無理なんだ」
「教えてくれるまで、帰らない!」
いや、心配して来てくれたんじゃなかっただろうか?
だが、一旦手から外れたボールは、そのままらしかった。
どれくらい、押し問答をしただろうか。
とうとう僕は、観念した。

「あのね、先に言っておくけど。紗希に心配掛けたかった訳でも、紗希が嫌いになった訳でもないんだよ。 ただ、紗希に嫌われたくなかったんだ」
「嫌いになったりなんて、しないのに」
「でも、心配だったんだ。あのね…」
紗希を見ると、食べたくなっちゃうんだよ、と、小さく囁いた声は。微かに震えて、いた。
紗希の目は、怖くて見れなかった。どう思われるか、解らなかったから。
紗希は、少し間を置いた後、信じられない、というように、呟いた。
「どういう、事…?」
「知らないよ」
投げやりのようだったが、本音だった。
「最初は、普通に欲情してるのかと思った。でも、違和感があった。その内、食欲があるのに食欲がないみたいな、変な事になった。ご飯がどんどん不味くなっていって、食べたいものが何なのか考えると、紗希しか浮かばなかった。おかしいとは思ってたけど、何なのかよく解らなくて、戸惑ってる内に、紗希に会う度に直接食欲を感じるようになったんだ」
淡々と一気に話すのを、紗希はジッと聞いていた。
「前に、人間の定義って何か、って話たでしょ?まさに僕は今、人間を辞めるかどうかの瀬戸際って訳だ」
自嘲的に囁いた後、でも、と、続ける。
「僕は、紗希が好き。紗希が大事。だから、どんなに腹が空いても、紗希を食べたくない。紗希に会えなくなるなんて嫌だ。でも、このままじゃどの道会えない。だけど、嫌われたくないから相談もできなかった」
目を逸らしたまま沈黙すると、そっと、横から抱きつかれた。
言ってくれたら良かったのに…と、小さく何度も呟くが、言える訳がない。
暫く、紗希の鼻をすする音だけが部屋に響いた。

「………ねえ……最初は…欲情に似てた、って、言ったよね…?」
「…うん」
どうやらそれは、気のせいだった訳だけど。
「…あのね…」
「……うん……」
「…少しだけ…試しに、噛んでみる…?」
「えっ…?」
驚いて紗希を見ると、紗希は、ほら、と手を振って、複雑な笑みを浮かべた。
「お腹空いてる時に、ガムを噛んで紛らわしたりするじゃん。それに、その……エッチな事、したら、さ…これは食欲じゃなくて性欲だって、身体がその内覚えるかもしれないじゃん」
だから…と、紗希が胸に顔を埋める。
うなじから微かに昇った香りに抱いたのは、果たして食欲か性欲か。
「ね…ちょっとぐらいなら…噛んで、いいよ…」
噛む?紗希を?ガムみたいに?
おかしいやら何やら、グチャグチャして、思わず笑ってしまった。
「く…くっ…ふ、ふ…は、は…」
懸命に押し殺しても、それでも漏れる。
「真面目だよ、私」
「解ってるけど…くくっ…紗希の方が、よっぽどおかしな事、考えるよ」
「おかしく、ないよ」
「でもそれじゃ、まるで、変なプレイみたいだよ」
「それでも、良いよ…」
「…え…?」
「変なプレイでも、なんでも、良いよ…一緒にいれるなら……離れたく、ないよぉ…そんなのヤダよぉ……」
紗希がまた、泣きだす。
僕は、ただ、そっとあやすしかなかった。
「僕だって、一緒にいたいよ…でも…我慢しきれるか、自信ないよ…いつか噛み殺しちゃうかも、しれない」
空腹を紛らわすガムになるのか。
それとも、渇いた時に海水を飲んだ時のように、より渇いてしまうのか。
どっちに転ぶかなんて、僕にも解らない。
「その時は、その時だよ」
「…いいの…?」
「うん、だから…その時まで、一緒にいて…」
紗希をそっと、抱きしめて答え代わりにした後、僕はある事に気付いた。
「じゃあ、一つ言っておかなきゃな事があるんだけど」
「何…?」
「ちょっと順番が前後したけど…僕と付き合って?」
「…最高に変なタイミング」
その通りだったから、僕は笑うしかなかった。
グシャグシャの顔のままの二人の笑い声が、静かに部屋に響いた。





あれはいつの事だっただろう、と、ぼんやりと思いながら回想に耽っていた僕の思考を、紗希の声が遮った。
「あ…」
現実に引き戻されるが、トリップしていた時間が長すぎて、すぐには目の前の事と思考がリンクしない。
それでも身体は勝手に、さっきまでの続きであろう事を、続けた。
紗希の身体に、そっと歯を立てる。
「う、あ、あぁ…」
漏れる声が、行為に反して、妙に艶かしい。
愛しくて堪らなかった。
「辛い?」
「だい、じょ…あぁっ!」
噛んだ跡を、そっと舐める。
猫がそうするように。
舌に合わせて、紗希の身体は微かに震えた。

…愛しい。
愛しくて愛しくて、堪らない。
だけど紗希は実際のところ、こんな僕をどう思っているのだろう?
僕は、紗希を傷付けたのだろうか。苦しめているのだろうか。
それとも…こんな事すら、喜んでくれているのだろうか。
思考がまたトリップする。
『ねえ、あのね。私以外にも、食欲って感じたりしてたの?』
『いいや、紗希だけだったよ』
『嬉しい。私、近藤君の特別に、やっとなれたんだね』
あれは、付き合い始めて一月ぐらい経った頃だっただろうか?
あの時、紗希は。本当に嬉しそうに、笑ったのだ。
僕に噛まれながら。
痛いはずの最中に。
あの頃と同じような表情(かお)で、同じような声で、紗希は優しく僕を受け入れていてくれる。
相変わらず食欲はなくならなくて、時折、強い苦痛にも似た衝動に侵されるが、そんな紗希の優しさが、僕を救ってくれていた、僕を僕に繋ぎとめていてくれた。
「大好きだよ、紗希」
囁いた声は、本当に本音なのにも関わらず、何故か虚しく聞こえた。

嗚呼、神様。
僕は一体、どんな悪い事をしたというのだろう?
だがすぐに、いや、と、思い直す。
神様なんて、昔から、そんなもんじゃなかったか、と……
神様なんて、昔から、優しくも冷たくもないのだ。
ヒトが勝手に期待して、自分勝手に裏切られた気になってるだけだ。
そんな幻想に付き合わされてる神様こそが、ホントは一番、いい迷惑なのかもしれない。
ああでも。
紗希が紗希だった事だけは。
「誰かに感謝したい、な…」
「…え?」
声に出ていた事に気付いて。
紗希を安心させるように微笑んで、なんでもないよ、と、答える。
そして…
僕はまた、接吻の雨を降らすように、優しく優しく、紗希の身体に口付けた…

願わくば。
僕がずっと、人でいれますように。
紗希がずっと、紗希でいてくれますように。

祈る先もないままに、そう、強く祈った。


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†創話遊戯† momentary and everlasting


「瑞穂?」
 怪訝そうに尋ねて来る、遠矢の声。
 私は安心させるように微笑むと、どうしたの、と聞いた。
「いや……」
 困ったように、遠矢が呟く。
 ああ、と私は気付いた。
 今日は、上の空でいた事が多かったから、それで心配になったのだろう。
 大丈夫だよ、と囁いてあげる。
 遠矢の心配してるような事は、何もないんだ。
 そう…遠矢の思ってるような事は、ね。

 ねえ、遠矢。
 私が今何を思ってるかなんて…貴方は判る?
 判らないでしょう?きっと、ね。
 でもそれでいいよ。
 別に貴方が知る必要は、ないんだ。

「瑞穂…」
 遠慮がちに掛けられた声に、だから優しく優しく、何?と尋ねてあげる。
「俺の事を…好きか?」
 半ば予想できていた問いに、当然、と答える。
 判りきった答だ、悩む余地もない。
 でも答に遠矢は、安心と不安が混じった顔をした。
 …ダッテ遠矢ハ判ラナインダモノ。
 遠矢は少し俯くと、縋るような、怯えるような、子猫にも似た目で、私の顔を覗き込んできた。
「抱いて欲しいんだ……」
 遠矢はそう言うとそっと抱き付いてきて、胸に左耳を当てた。
 存在の証を、確かめるかのように……

 …抱イテ?ソノ意味ハ何?
 愛とSEXは、結び付きはしてもイコールじゃないんだよ。
 好きでなくてもSEXはできるし、SEXしないからと言って相手を愛してないとは限らない。
 SEXは、愛情表現にはならないんだ。
 ナノニ貴方ハ求メルノ?
 誰より私の愛情を疑ってる貴方が、形にならない心を信じきれない貴方が、より不確かな愛情表現で気持ちを確かめようと言うの?
 くすりと、笑う。
 貴方ハ判ラナイ。キット、判ラナイ。何モ何モ何モ。
 私の心が、緩やかに。
 緩やかに、黒いモノに包まれていく。
 ……貴方が…引き金を引くんだよ。

 ねえ、遠矢。
 そっと、囁く。
 貴方の綺麗な目を、見つめて。
 私は、貴方の事が好き。だから、貴方を私だけのものにしたい。
 囁くと遠矢は、言葉に含まれた微妙な音に気づいてか、無言でただジっと私の目を見つめていた。

 遠矢、永遠に私だけのものになってくれる?
 問うと遠矢は、僅かに小首を傾げた。
「俺はお前のものになれるのか」
 こくりと、頷く。
「お前も、永遠に俺のものだな?」
 こくりと、頷く、優し気な笑みで。
「なら、いい」
 そっと、遠矢は呟いた。
 思わず、笑いが込み上げて来そうになる。
 私はそれを、遠矢とキスする事でせき止めた。
 唇を重ね合わせると遠矢は、そっとその目尻から雫を滴らせた。

 好きだよ、遠矢。
 囁いて、私は遠矢に口移しで毒を飲ませた。
 極上の毒だ、痛みも苦しみも、ない。
 死の口付け――それは私から遠矢に贈る最後の、プレゼント。
 私の中で遠矢はゆっくりと死んで行く、眠りにつくように穏やかに。
 唇を離すと、私は満足気に微笑んだ。
 未だ温もりを残している遠矢を見つめて、ああそうだ、と呟いた。
 あなたを食べて、あげようね。

 それは永遠への、プロローグ。
 ゆっくりと、咀嚼していく。
 これで貴方は、もう誰も見ないし。
 もう誰にも、見られない。
 言葉を交わす事も、触れる事も。
 ただ記憶だけが、貴方と共に私とある。

 笑みが洩れる。
 私は遠矢を抱えるとその場を去ろうとした。
 そこは私の部屋ではあったけど、もういらないのだから。
 私の名を、私のものであった物と共に捨てて、私は窓から外へ出た。
 手には遠矢のものだった物だけ。
 だって私は貴方以外に必要なものなんてないんだもの。
 窓から飛び降りた時、脳裏に遠矢の姿が重なった。
 ああ、と呟く。
 私の記憶は全て、貴方に連なるね。
 甘い痛みに、僅かに微笑む。

 ああ、そうだ。
 君の記憶を持ってるのは、私だけで充分だよね。
 私以外が貴方の記憶を持ってるだなんて、許せないよ。
 待ってて、遠矢。
 全部取り戻すからね。
 くすくすと、笑って。私は闇の中を駆けた、永遠に向かって。


 通り過ぎた季節の中に散りばめられた記憶を辿り、貴方へ向かおう。
 通り過ぎた季節の中に散りばめられた思い出の欠片を集め、貴方へ向かおう。
 全てのピースが集まった時、永遠は完成する。


 遠矢の友人、遠矢の家族、遠矢の知人、遠矢に関するデータ…
 遠矢の近所に住んでいた者、遠矢がチラリとテレビに映った際に見ていた可能性のある者…
 全て。悉く。

 それらを消去し終わると、私は遠矢の躯に手を這わせた。
 遠矢……
 そっと、愛しい人を思い浮かべる。
 さあ、どこへ行こうか。
 考えて、私は昔の住処を思い出した。
 遠矢を1度だけ連れて行った場所・・・そして遠矢と初めて結ばれた場所。
 きっと、最後を飾るのに相応しい。
 思って私はうっとりと微笑んで、そこを後にした。


 昔の住処は、驚きと喜びを持って、主を歓迎してくれた。
 魔界の深い森の中だ、住処は荒らされた風もない。
 私は最も古くて大きな樹の下へ行くと、座り込んだ。
 落ち付くと同時に、痛みが戻って来る。
 遠矢を取り戻す際に、負った傷。
 手当てを全くしていないのだから、痛むのは当然と言えた。
 森が主を心配して癒そうとするのを、やんわりと拒否する。
 必要はなかったし、それにこれは遠矢を取り戻した証だったから。
 そう、遠矢は私と共に有る。
 もう私以外には、遠矢を知っているものは一人もいない。
 私は遠矢を愛し、永遠と絶対を望んだから、遠矢と遠矢に連なるものを、殺した。
 けどね、遠矢。私は、貴方のいない世界で生きていく気も、ないんだ。
 だから、私もすぐに逝くよ。

 貴方を愛した故の、終焉。
 貴方が死んだ故の、終焉。
 そしてそれこそが、永遠の始まりになるんだ。
 そう…永遠はまだ完全じゃないんだよ。
 永遠と絶対は、遠矢を知る最後の一人である、私が死ぬ事によって、完成するんだ。
 その時初めて、貴方は本当に私だけのものになるんだよ。

 死んだ先の私達は、私達とは違う私達だ。
 来世?常世?
 そんなモノは、求めていない。
 私達はここで終わるから、だから、永遠で在れるんだ。
 そう…永遠とは、現在進行形の中には決して存在しない物なんだよ。

 私はゆっくりと剣を抜き…そして自らを貫いた。
 これは永遠へのプロローグの、終り。
 絶対にして永遠の未来は、今、始まる――。

ru_ci_fel at 19:11|PermalinkComments(0)†創話遊戯†